学生の皆さん、毎日勉強や部活動にお疲れ様です。「この数学の公式、いつ使うの?」「歴史の年号を覚えて何になるの?」そんな風に、目の前の勉強に意味を見出せなくなるときもありますよね。
実は、皆さんが今向き合っている勉強は、将来の「働き方」という自由を手に入れるための、いわば「人生のチケット代」です。でも、そもそも「会社で働く(この記事ではサラリーマンについてお話します。)」と言っても、実は入り口によって進む道が全く違うことを知っていますか?
今日は、大手メーカーで働く現役エンジニアである私の個人的な見解として、将来の進路を考えるヒントをお話しします。
総合職と専門職
まず、会社に入るときに選ぶ「コース」のようなものが2つあります。これを「総合職」と「専門職」と呼びます。
総合職(ゼネラリスト)
「チームの監督やキャプテン」を目指すコースです。 特定の仕事だけをずっとやるのではなく、数年ごとに「営業」「企画」「人事」など、色々な部署をあちこち移動(ジョブローテーション)します。
- 役割: 会社全体がどう動いているかを知り、バラバラな部署を一つにまとめること。
- 特徴: 転勤や異動がありますが、その分、会社全体の仕組みに詳しくなれます。
専門職(スペシャリスト)
「特定のポジションの達人」を目指すコースです。 「車の整備」「エンジンの実験」「デザイン」「プログラミング」など、自分が得意な一つの分野を、何十年もかけて深く、深く掘り下げていきます。
- 役割: 誰にも真似できない「神業」や深い知識で、難しい問題を解決すること。
- 特徴: 基本的にその道のプロとして働き続けるため、異動は少ないですが、その分野で常にトップを走り続ける努力が求められます。
メーカーだと、理系の方は技術系総合職という言われ方もします。技術系総合職では、あまり事務系の部署には異動はなく、技術系の部署内で異動があることがあります。
現場のリアル:なぜ「調整役」の給料が高いのか?
こで、皆さんが将来「お金」の話でびっくりしないように、メーカーのリアルな話をします。
メーカーの現場には、目をつぶっていても機械の音だけで故障箇所がわかるような、神様みたいな「専門職」のベテラン技術者さんがいます。一方で、入社して数年の、まだ自分では満足に機械も扱えないような若手の「総合職」エンジニアがいます。
実は、給料だけを見ると、この若手エンジニアの方が高い場合が多いのです。「一生懸命技術を磨いているプロの方が高いはずじゃないの?」と思うかもしれません。これには、会社という組織の「評価の仕組み」が関係しています。
「影響力の広さ」が給料を決める
専門職のプロが1つの製品を完璧に仕上げたとき、その成果はその「1つの製品」に留まることが多いです。 一方で、総合職のエンジニアは、設計部署、製造工場、部品を納める協力会社など、何百人という人を「調整」して、新しい製造方法を決めたり、無駄をなくす仕組みを作ったりします。
もしその調整がうまくいけば、これから作られる何万個、何十万個という全ての製品の品質が上がり、コストが下がります。
会社は「個人の技術の凄さ」も大切にしますが、それ以上に「どれだけ多くの人や製品に良い影響を与えたか」を評価して給料を決める傾向があるのです。また、総合職は「会社の命令でどこへでも行く」という不自由さを引き受けている分、その見返りとして給料が上乗せされているという側面もあります。
進路はどう選べばいい?(大学?専門学校?就職?)
この「役割」の違いは、皆さんが高校を卒業した後の進路に直結します。
総合職を目指すなら「大学」が王道
総合職には、特定のスキル以上に「論理的に考える力」や「自分と違う考えの人を説得する力」が必要です。
- 理由: 大学という場所は、色々な地方や背景を持つ人と出会う場所です。4年間で幅広い教養を学び、サークルやゼミで「人間関係の調整」を経験することは、将来「全体をまとめる力」の強力な土台になります。そのため、多くの企業が総合職の採用条件に「大学卒業」を掲げています。
専門職を目指すなら「最短距離」で現場へ
一方で、特定の技術を極める専門職を目指すなら、大学以外にも専門学校やスキルが身につく企業への即就職も選択肢に入ります。
- 理由: 技術の世界は、机の上の勉強よりも「どれだけ本物に触れたか」がモノを言います。10代・20代の吸収力が一番高い時期に、プロの道具を使い、プロの技を目の前で盗む。この「経験値」は、4年間大学に座っているだけでは絶対に手に入りません。早く現場に出て、圧倒的な「手」の感覚を磨くことは、それだけで大きな武器になります。
専門職でも「給料を上げる」大チャンスがある時代
「でも、さっき調整役(総合職)の方が給料高いって言ったじゃん…」とガッカリしないでください。実は今の時代、専門職こそ工夫次第で給料を爆発的に上げられるチャンスがあると思っています。
昔は、専門職の価値は「会社の中」でしか認められませんでした。でも今はインターネットがあります。
例えば、あなたが「日本一、精密な加工ができる技術者」だとしましょう。会社で働いているだけなら、給料は会社のルールのままです。
でも、そのこだわりや技術をSNSで発信したり、初心者向けにブログで解説したり、YouTubeで「正しい道具の選び方」を発信したらどうでしょう?
あなたのファンが増え、日本中、あるいは世界中から「あなたにアドバイスしてほしい」「あなたと一緒に仕事がしたい」という依頼が届くようになります。自分の「好きなこと」を極め、それを外に向かって発信して「個人の影響力」を持てば、組織の枠を超えて価値を生み出せる。そんな「稼げるスペシャリスト」になれる時代だと私は考えています。
「やりたいことがまだ見つからない」君へ
もし、今この時点で「これが一生の仕事だ!」というものが見つかっていないのであれば、個人的には総合職を目指せる大学進学を強くおすすめします。
なぜ「とりあえず総合職」がベターなのか?
- キャリアの「お試し」ができる: 会社に入ってから色々な部署を回れるので、働きながら「あ、自分は営業より企画の方が向いてるかも」と自分の適性を探すことができます。
- 人生の「OS(土台)」が手に入る: パソコンでいうと、専門スキルが「アプリ」なら、総合職で学ぶ調整力や考え方は「Windows」や「macOS」のような「OS」です。どんな仕事に就くことになっても、この「土台」があれば一生食いっぱぐれることはありません。
- セーフティネットになる: 万が一、自分の専門分野がAIなどの進化で必要なくなってしまったとき、総合職として培ったOS(土台)があれば、別の領域へスライドして生き残ることが可能です。
また、やりたいことが決まってから、その分野の専門性を磨くのでも、決して遅くはありません。
最後に:今、勉強している君へ
皆さんが今、必死に向き合っている勉強。これらは将来、あなたが**「どのチケットを手に取って、どの列車に乗るか」を選べるようにするための、大事な準備**です。
誰にも負けない技術を磨いて、「個」の力で世界を驚かせたいですか?
大きな組織の中心に立って、社会をダイナミックに変えていきたいですか?
将来、どんな自分になりたいか? それを少しだけ想像しながら、目の前の教科書を開いてみてください。勉強のモチベーションが少し上がれば幸いです。
