私は大学受験前、このような勉強をしていました。
- とにかくノートを綺麗にまとめ、重要ワードを赤ペンで書く。
- それを赤シートで隠して、1ミリの狂いもなく暗記するまで繰り返す。
- テスト前はカフェイン錠剤を流し込み、根性で頭に詰め込む。
数学ですら「公式さえ暗記すれば何とかなる」と信じ、思考停止の暗記モンスターと化していました。勿論、大学受験は失敗し、勉強方法についても暗記という根本的な考え方を捨てきれず、社会人になってからも相当苦労しました。そんな苦労の中で得た学びのやり方を発信できればと思っています。
完璧主義な「暗記」が、私の成長を止めていた
学生時代の私は、インプットこそが正義だと思っていました。綺麗なノートを作り、赤シートで隠して「全部覚えたぞ!」と満足する。でも、今振り返れば、それは単なる「作業」でした。
社会人になって、そのやり方は通用しなくなりました。 一通りの教育が終わると、すぐに最前線の現場に放り出されます。右も左もわからない素人なのに、会議では「君はどう思う?」と意見を求められる。議事録を書けば、知らない専門用語のオンパレードで、冷や汗をかきながら必死にペンを動かす……。
正直、最初は地獄でした。「まだ完璧に理解していないのに、アウトプットを求められるなんて無理だ」と。しかし、不思議なことが起こりました。 完璧に理解してから行動しようとしていた時よりも、「分からないなりに必死に意見を出し、上司からボコボコに指摘されて修正する」ほうが、圧倒的に仕事の覚えが早かったのです。
脳が一番働くのは「間違いに気づいた瞬間」
なぜ、無理やりのアウトプットがこれほどまでに効くのか。 その根拠は、ベストセラーの『アウトプット大全』(樺沢紫苑 著)にも明確に記されています。
この本では、インプットとアウトプットの黄金比は「3:7」であると説かれています。つまり、教科書を読む時間は3割でよく、残りの7割は問題を解いたり、人に教えたりすることに使うべきだということです。
私たちが「あ、これ重要だ!」と脳に刻み込むのは、知識を入れた時ではありません。「アウトプットしたとき、さらにそのアウトプットに対して指摘を受けたとき」です。
これを学生の皆さんの勉強、例えば「物理」の問題で具体的に解説しましょう。
「分からないなりに解く」最強のステップ
多くの人は、物理の問題を見て解き方が分からないと、すぐに解答を見て「ふむふむ、なるほど」と納得して終わりにしてしまいます。これが「インプット偏重」の罠です。そうではなく、以下の「仮説・実行サイクル」でアウトプットしてみてください。
【事例:斜面を滑り落ちる物体の速度を求める問題】
- 問いの理解: 「この物体の、斜面の下端での速度を知りたいんだな」とゴールを明確にする。
知識の引き出し: 「速度を求めるなら……等加速度直線運動の公式か? それともエネルギー保存則か?」と候補を挙げる。 - アプローチの仮説定義: 「よし、計算が楽そうな『エネルギー保存則』でいこう」と仮説を立てる。
- 実行: 式を立てて計算してみる。
- 詰まったら別の仮説: 「あれ? 摩擦があるからエネルギーが保存されないぞ。じゃあ、運動方程式を立てて加速度を出してから、速度を求めるアプローチに変えよう」と修正する。
- 出し切る: 分からないなりに、今の自分が持てる知識を全て使い切って、最後まで解き進める。
この「全て検討し終わってから」答え合わせをすることが極めて重要です。
もし間違えていたとしても、「あ!摩擦係数をかけ忘れていた!」とか「垂直抗力の成分を勘違いしていた!」という「間違いの自覚」が強烈なインプレッション(印象)になります。
この「うわ、やらかした!」という感情こそが、脳の海馬を刺激し、記憶を長期保存へと変えてくれるのです。赤シートで隠して無感情に暗記していた時とは、情報の定着度が天と地ほど違います。
根性よりも「サイクル」を回せ
かつての私のように、カフェイン錠剤を飲んで徹夜で暗記する「根性」は、短期的には通用するかもしれません。でも、社会に出れば「正解のない問い」ばかりです。そこで求められるのは、暗記した量ではなく、「分からない状況で、いかに早く仮説を立て、アウトプットし、フィードバックを受けて修正できるか」というサイクルです。
勉強は、綺麗にまとめるためのものではありません。また、この頭の使い方は社会人になってからも必要になります。今からこの思考の「型」を定着させるべきです。
この意識を持つだけで、皆さんの学習効率は劇的に上がります。今すぐ赤シートを置いて、真っ白な紙に「今持っている知識だけで、どう解くか?」の仮説を書き殴ってみてください。
