社会人としてそれなりの年数を重ね、いわゆる「中堅」と呼ばれる立ち位置になってから、切実に感じていることがあります。それは、学生時代に一番身につけておくべきだったのは「語彙力」だったのではないかということです。
私はエンジニアとして、新しいシステムを世に出すために日々抽象的な課題と向き合い、事実に基づきどのような仕様にするべきか検討しています。専門領域の異なる数多くのエンジニアと議論することもありますが、正直なところ、事実と意見を正しく伝えることさえできれば仕事は進むので、語彙力がなくてもさほど困りません。(だから英語があまり上手ではない私でも、海外のエンジニアと仕事を進めることも可能です。)
しかし、語彙力についてふとした瞬間に突きつけられる「差」があります。 それは、会議の合間や移動中、飲み会などの何気ない雑談の場面です。表現が豊かな人は、それだけで圧倒的に「知的」に見えます。物事の捉え方が多角的で、話が面白い。その「言葉の解像度」の高さが、結果としてその人の信頼感や魅力に直結しているのを目の当たりにするたび、私は「語彙力は大事だな」と痛感するのです。
社会人になってからの語彙力の学習はモチベーションが上がらない/継続が難しい
「必要だと気づいたなら、社会人になってから学べばいい」と思うかもしれません。確かに、このブログで語っている学び方を身につければ、後天的に語彙を増やすことは可能です。しかし、実際にやってみて痛感したのは、社会人になってからの語彙習得は「効率が非常に悪い」という事実です。
- 具体的な「ゴール」が設定しづらい
受験や資格試験、目の前のプロジェクトのように「合格」や「完了」という明確なラインがありません。ゴールのない学習はモチベーションの維持が極めて難しく、つい「仕事に直結する技術」の学習を優先してしまいます。 - 「アウトプットの場」が激減する
これが最大の障壁です。社会人になると、話す相手は職場の人や家族に固定されがちです。新しい言葉を覚えても、それを試す「気軽な雑談」の機会が学生時代に比べて圧倒的に少ないのです。テスト環境がない場所でコードを書くようなもので、身につくスピードが上がりません。
だからこそ、私は確信しています。語彙力という資産は、アウトプットの場が無限にある「学生時代」に積み上げておくのが最もコスパが良いのだと。
学生のうちにやっておくべき、2つの「言葉の投資」
もし、私が今の記憶を持ったまま学生に戻れるなら、この2つを徹底します。これは「学び方」を知っている今だからこそ言える、最も効率的な語彙習得法です。
- バックグラウンドが違う人と、あえて会話する
仲の良い友達、部活が同じ友達。そこは居心地が良いですが、言葉は停滞します。あえて、全く違う専門分野の人、違う世代の人、異文化の人と話してください。「自分の常識が通じない相手」に自分の考えを伝えようともがく時、脳は必死に新しい言葉を探し、吸収しようとします。 - 良い表現を「サンプリング」して、すぐに「リリース」する
本やテレビ、あるいは誰かとの会話の中で「この言い回し、面白いな」と感じた表現があれば、すかさずスマホにメモしてください。そして、それを24時間以内に別の誰かとの会話で「自分の言葉」として使ってみるのです。 「いいな」で終わらせず、一度でも実際に実践することで、それは単なる「知識」から「言葉の表現力」に変わります。
最後に:語彙力は、人生の「複利」になる
語彙力は、一晩で身につくものではありません。しかし、若いうちに手に入れた言葉の力は、その後の数十年、人生のあらゆる場面で利息を生み出し続けます。社会人になって、忙しさとアウトプットの場不足に悩みながら語彙を鍛えるのは、本当に大変です。中堅エンジニアになった私からの、切実なアドバイスとして受け取ってください。
「今、言葉を磨くことは、将来の自分を助ける投資になる。」
努力の積み重ねが「深い魅力のある」最高の大人にしていくはずです。
